初めての登山(陣馬山)

大学1年生の頃から資格試験の勉強を毎日していた僕は、所属していたサイクリングサークルの活動で2ヶ月に一回程度のサイクリングを楽しむことが唯一の楽しみだった。
2010年の春に北海道の田舎から出てきて間もなくの僕は、自分の足で色々な場所を訪ね、仲間たちと寝食を共にするという経験に大きな意味を感じていた。


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風張峠へのアプローチ。サイクリングサークルという名前から河原のサイクリングロードを走る活動を想像していたら、活動はもっぱらヒルクライムだった。

無味無臭に感じられる日常の中で唯一色のある景色が汗を流しながら進み、たどり着いた場所で見る世界だった。
結局資格試験の勉強が実を結ぶことは無かったが、大学生活でアウトドア活動と仲間たちと出会えたのは本当に大きなことだと思っている。

サイクリングサークルの活動の一環で、2010年12月に行われた「日の出ラン」。
活動の趣旨としては、深夜に自転車で登山口まで行き、そこから登山をして御来光を見ようというものだった。
少し変わったきっかけだが、これが僕の初めての登山だ。

目的地は陣馬山。
路面はやや凍結している箇所もあり、非常に寒くて凍えていたのを鮮明に記憶している。

和田峠の駐車場に自転車を停め、陣馬山への登山道に足を踏み入れる。
暗闇の中でヘッドランプの灯りを頼りに一歩一歩進む冒険が、長い間感じることのなかった童心をくすぐった。
自分の住んでいる世界が少しだけまた広くなるという高揚感があった。

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登っている途中。日の出まであとわずかという期待感が高まる。関東平野の夜景も綺麗だ。

1時間も歩かないうちに山頂にたどり着き、仲間とラーメンやおしるこを啜った。
今まで食べたどんな食べ物よりも美味しかった。
大きな鍋で作っていたせいか、湯が温まりきらなく麺の芯が茹で上がらないようなラーメンが美味しく感じた。

そして、いよいよ夜が明ける。
いつもならまだ眠っているので、この瞬間に立ち会うのは初めての体験だ。
実は初日の出もこれまで見たことがなかった。

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美しい。この時に同時に感じた太陽の暖かさは、きっと気温とは違う何かだろう。

この日、僕は無色の日常に、何か特別なものを持ち帰る体験をした。
きっとこの先、陣馬山で感じた太陽の暖かさを忘れることが出来ないと思う。

アスカ

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